代表の横田は横浜の造園屋さんの社長さんより根巻きのやり方を学びました。この道50年を超える方です。
最近ではまともに移植が出来る職人さんもいません。樹木を抜いてしまう、抜根はやる機会が多いと思うのですが、移植や根巻きを実際に機会が少ないのが現状です。何度か一緒に作業を行いましたが、樹木が心配になるコトが多々です。
もくじ
根巻きとは?
樹木は農業と同じく、生産者さんがいるのです。畑やビニールハウスで樹木を育てています。必要な大きさなったら今度は出荷をしなくてはいけません。
野菜みたいに機械で一網打尽に収穫するワケではありません。いわゆる”生け捕り”にするのです。その際行うのが『根巻き』なのです!
私たちは普段から皆さんのお庭などで新しいお庭をつくる、リフォームすると言ったとき『移植』と言った作業の際、根巻きを行っています。
では埋まっている樹木を掘り取って、根巻きを行う様子をご紹介します!
常緑ヤマボウシの移植
この樹木は『常緑ヤマボウシ』です、常緑とつくのは、落葉もあるからです。
常緑ヤマボウシは庭木として、とても人気があります。ホンコンエンシス、月光と言う品種は良く見かけます。
どちらの品種も白い四枚の花弁の花を5~7月に咲かせます。
また9月頃には赤い実を付けます。あまり知られていませんがとても甘く、ジャムにして食べることが多いです。見た目はちょっと毒々しい感じも…でも美味しいので、ぜひチャレンジしてください!
ステップ1:根回し
まずは掘ります!どこを掘るかと言うと幹を中心として円を描くように掘るのです。幹の太さ(周囲)の長さの1.5倍それが円の半径になります。
その際、写真のようにスコップを逆向きにして差し込むのです。そして細かい根っこを断ち切ります!これを『根回し』と言います。
はじめは少しづつ手でちょっとちょっとホリホリして、根っこの様子を伺います。あまりに太い根っこがあったらスコップが入っていきません、もっと広い円を描くように掘ります。
無理にガツガツ掘らずに様子を見ながらスコップを差し込んでみてください。あくまで”細かい根っこを切断するのが目的です”。
生産者さんはこの作業を、年に一回やっておく必要があります。それはこういった出荷の際根っこを痛めないよう、下準備を毎年行っておくのですね。
何年も放置してしっかりとした根っこが地面に定着している。それをいきなり掘ったとしても、枯れるリスクが高いのです。
それが”根回し”の語源です。根回しってちょっとズル賢い意味合いにも聞こえますが、コツコツと入念な下準備をするって意味なのです。
ステップ2:掘り取り
さきほど、根回しでスコップを差し込んで隙間が出来ましたが、今度は掘ります。
どこを掘るかと言うと、根っこの周りの方を掘るのです。樹木に近い方は何もしませんよ、スコップで差し込んだ外側を掘るのです。
スコップの向きは普通の使い方です。これが大変な作業ですがなるべく広く掘ります。
こんな感じになるまで掘ります!今、見えてる樹木の根っこの固まり、これを『根鉢』と言います。
これは樹木の根っこに土が引っ付いている状態です。これを絶対に崩さないようにしてください!
最後に根鉢の下、そこにスコップを差し込んで地面から分離させます。
綺麗な半円ですね!細かい根っこがたくさん出ているのが分かります。太い根っこは樹木を安定させるため、細かい根っこは水分を吸収するためにあります。これはとても良い状態の根っこです。
もっと樹木に近い方を掘っていたら、太い根っこが出てきたかもしれません。それは移植のときは掘りすぎのサイン。また太い根っこを切るのは危険でもあります。
画像の状態は根っこも問題ありませんし、根鉢の大きさも問題ない、こんな感じで掘り取りたいです。理想的なカタチです。
樹木や植物の根っこは、多く細かい根っこがある方が良い。この細かい根っこから、水分や栄養素を吸収するのです。細かい根っこが多ければ、それだけ地面に安定していて元気なのです。
そして飛び出ている根っこをハサミでカットして、ツルツルに仕上げます。ここまで綺麗にできれば最高です!これで掘り取りは終了です。
すぐに移植する場合は、この状態で新しく植える場所へ移動。すぐに植えこんでください。出来れば根っこの大きさが分かった時点で、新しく植える場所を適度なサイズの穴を掘っておくことをおススメします。樹木を掘り取って根っこを処理、すぐに植えられる方が良いですね!
ステップ3:根巻き
すぐに新しい場所へ植えられない場合『根巻き』を行います。これは先ほど根っこに定着していた土が、崩れないために行います。
根鉢を崩してはダメなのです。根っこの向きや土に密着している必要、根っこの乾燥など、生きるかどうかの瀬戸際です。
ちなみに、ポットから植物を植える際は、時期や種類によって根鉢を崩す場合があります。それはポットで根っこがいっぱいになってるからです。今回は違いますよ、崩さないように!
準備するのは麻布(あさぬの)、麻縄(あさなわ)です。麻布は根鉢をしっかり巻くことが出来るサイズと大きさ、麻縄は下に伸ばして準備しておきます。
樹木を載せます。根鉢の上に、最低でも10センチほど麻布を残しておきます。根鉢の上側にも巻くからです。
麻布をグルっと巻きます。重なる部分は余裕をもって5センチほど重ねます。あまり多く重ねる必要もないです、麻布は伸びます。
そして麻縄でぐるぐる巻いていきます。これは難しくまた複雑なので、別の機会にご紹介します。
このようにしっかりと巻きます。崩れない、ほつれない、緩まないことです。これで『根巻き』の完成です!
皆さんがやる時は緩まないように、しっかりと麻縄を引っ張って麻布を固定してください。最後は団子結びでもOKですよ!とにかく崩れないようにしっかりと麻布を巻く、緩まないように麻縄で固定、それだけが大切です!
この完成形、何に似てるかと言えば、皮をむいたミカンです。そこで『ミカン巻き』とも言われています。比較的、小ぶりな樹木の根巻きの時に行います。小ぶりといっても2~3メートルの高さです。ひとりで根巻きが出来るので作業も早いです。
これよりも根鉢が大きくなると『樽巻き』いった巻き方で、2人作業になってきます。そうなると一人で持ち上げたり出来ないぐらいの樹木ですね。掘る量も穴の大きさもかなり大きくなり、大変な作業になります。
まとめ
なぜ根っこを布で巻くのか?掘ってそのまま持っていけばいいのでは?すぐに新しく植える場所へ植えるなら根巻きの必要はありません。
根っこは樹木の命です
それを乾燥から守ってあげるためなのです。根っこについている土が落ちないように保護する、水分を保持したり、太陽の直射日光に当たらないようにしたりする必要があります。
根っこを全部掘り出すことは大変です。とても大きな樹木の根っこは幅が数十メートルあるのです。これは古来の日本で生み出された職人さんや生産者さんの知恵です。とても繊細で気を使う作業です。
細かいところまで、コツコツと、準備万端に!そういった素晴らしい意味合いで『根回し』『根ほり』って言葉があります。
ちなみに『根ほり、葉ほり』で隅々まで。そうった言葉がありますが、掘り取ったら葉っぱを少し剪定してあげます。根っこを切ると水を吸収できないので、葉っぱからの水分の蒸散を防ぐのです。
樹木の状態は、第一に葉っぱに現れます、それは根っこに問題がある場合も葉っぱに現れます。ですので、樹木はしっかり隅々まで観察してあげましょう!根掘り葉掘り、気にしてあげることです!
この状態で運んで皆さんのお庭に植えます。植えたら季節や天候にもよりますが、一週間に一回ぐらいの水やりが必要です。
根っこを切っています。まだ樹木は自分達で上手に水分を吸収できないので、根っこが張り、樹木自身で水を吸収出来るまで水やりをお願いします。
お庭づくりや剪定、樹木の移植に関して遠慮なくお問い合わせください。