マンションの住民さんの願いは”マンションの価値を上げること”、元からこのマンションはとても人気があって市場価値は高いのです。さらに将来的な価値を見据えて今回のご依頼をいただきました。何より嬉しかったのは価値を上げるために、植物や庭にそれを託そうという住民さん皆さんの”想い”です。
カスケードとは人工的につくる”滝”です。水を循環させるための機械の管理がとても大変なのです。そのためカスケードとしてではなく、そこに植栽を出来ないかと考えられました。折しもこの時代は世界的な感染症の流行があるとき、私たちは”だからこそ”出来るプランを提案しました。美しいだけじゃない、住民さんの心癒し集う場所としての機能を持たせることにしたのです。
テーマは”旅行”、このマンションに居ながら外国の息吹を感じる、なんともワクワクするようなイメージが膨らむ提案が私たちの強み。他社さんとのコンペになりましたが、圧倒的な賛同を得て予算以上の新しい価値を実現することが出来ました。私たちに託してくださった住民さんの想いがカタチになった、私たちとしても忘れられない時期を経験できたお庭づくりです。
◆予算:120万円(自動灌水設置含む)
◆施工期間:2週間
◆年間管理:90万円(樹木剪定含む敷地内全て、年4回)
皆さんは”価値観”というものをどう考えていますか?何に価値を置いていますか?とある有名俳優さんが所有されていたマンション、D’グランセ・世田谷テヴィエでは”植栽”に新しいこれからの時代の価値を見出されました。老朽化したカスケードをマンションのシンボルガーデンとして、作り替えようと決断されたのです。
複数の造園会社のコンペが行われ、私たち造園会社ぐりんぐりんが圧倒的多数で選ばれました。まず皆さんにこの機会をいただき感謝します。また私達にとっても今回のマンションのチャレンジに関わる事が出来てとても嬉しく思っております。管理会社含め、お住まいの皆さんのご協力のもと、無事完成できたことは本当に感謝につきます。ありがとうございました。
【テーマ】
今回の庭づくりに関して、私達はマンションの皆さんのためにテーマを決めました。それは”旅行”。外出もままならないこの時代にこそ”旅行”。『行けないなら持ってこよう!』をテーマに掲げ、皆さんをご案内する旅行先に”憧れの南仏”を選びました。場所はゴルドー、絵画の巨匠や映画監督からも愛された隠れた名所。その土地の雰囲気を”生きた一枚の絵画”としてお庭づくりします。
『何の道だろう…この先には何があるのか…』そんな旅行で味わうワクワクの冒険心をくすぐる未知の世界。何年も毎日の繰り返しがいつの間にか非日常へ変わってしまった、普遍的なその土地だけの空気感と生活。そういった新しい文化に触れる好奇心をくすぐる、自然と人が何年もの時間の中で溶け合ったお庭づくりをご提案しました。
何でもないような街の風景が、ある条件のもとでは”芸術”に変わる。そんな植物とアート、そしてデザインのチカラを知り尽くした私たちだから出来るプランがあるのです。これはお庭づくりを超えて、このマンションにお住まいの皆様の日常を変える力を持つデザイン。それこそ私たちが提案するお庭づくりなのです。
【施工前】
場所はマンションの階段を上がったメインフロアーのカスケード、滝が流れ落ちる仕組みのカスケードは、劣化するとメンテナンス管理がとても大変、そのためカスケードに新しい価値を見出そうと、マンション住民の皆さんがお庭に期待をかけました。
しかし以前から慣れ親しんだこの水がある場所、その気配だけは残したいと希望される方々もいらっしゃいます。そういった皆さんの想いや気持ちを汲み取ることは、お庭のデザインを決める上でとても大切な”条件”になります。そうすることで、私達はマンションの一員としてお庭づくりに参加することが出来るようになるのです。
【施工後】
この場所の環境的条件は半日陰、そして排水が詰まりにくいようにする、風通しの悪さなどがあげられます。そのため樹木と植物を数ある中から選択し、テーマに合った植栽にしました。場所はカスケードですので全方位タイルで囲まれています、それを解体するのはとても大変な工事になります。そのため樹木や植物はすべて鉢植えに植えられています、地面は底上げして通路の高さと同じ高さにしてあるのです。そうすることで施工やマンションに負担がなく、フロアーと一体感が生まれます。
- 西洋シャクナゲ
- ミモザ
- シャリンバイ
- 常緑ヤマボウシ
- ギンモクセイ
- などなど
下草に関して、部分的に完全な日陰を想定して植物を選んでいます。
- マホニアコンヒューサ
- カレックス
- ディアネラ
- ヒューケラ
- ラベンダー
- クリーピングタイム
- クリスマスローズ
- などなど
石の小道はセメントで固定していますので、安全に上を歩くコトが出来ます。メンテナンスやお庭の中に入って楽しむことも出来ます。カスケードの右側には一段下がった排水穴がありますので、その部分の石材は簡単に外せるようになっています。汚れやつまり除去のためのメンテナンスが問題なく出来ます。
主な石材はアメリカ産ディープクリークウォーリング、周りの大き目の砂利は淡路ゴロタです。この美術館のようなマンションにはどちらもとても雰囲気が合いますね。落ち着きと深みがあることが最重要です。小道は曲線であることで、奥行きを感じるコトが出来ます。『この先はどうなってるだろう…』って好奇心を刺激する仕組みです。その道を覆い隠すように下草の植物は配置されていますので、いずれ道を覆いかぶさるように成長してくれるでしょう!そうなったらもっと魅力的な雰囲気を作り出してくれます。
植栽は半日陰から日陰の植物を多用しています。それぞれ鉢植えを使って寄せ植えのように植栽、樹木の足元を飾っています。時期により花も楽しめる下草が多いので、一年中どこかで花が咲く仕掛けです。そうすることでこのお庭はいつ見ても観賞価値の高い場所として皆さんに気にしていただけることでしょう。
この場所は元はカスケードであることの足跡として、メダカの水槽を設置する素敵なご意見をマンション住民さんから頂きました。どなたかが貴重な種のメダカを育てているそうなのです。このマンションやお庭に合うように鉢植えを利用してメダカの水槽として利用しています。”ちょっと覗き込む…”そんな素敵な仕掛けも生まれてより楽しくなりました。生き物の存在って凄いですね。
【追加の庭づくり】
施工前の様子です。以前は樹木などが植えてあったそうですが、それが今では伐採され雑草が生え放題になっていたそうです。先のカスケードはマンションの住民さんのためのガーデンでしたが、こちらは道路沿いのメインの場所なのでとっても目立ちます。実はこの場所こそこのマンションの価値が問われる場所なのではないでしょうか?
私たちが提案したのは”カスケードとつながりがある庭”。これはこの道路を通る地域の皆さんのための植栽でもあるのです。そして住民さんやマンションを訪れたお客さんたちは、まずこの植栽を見ます、それからマンションに入られてカスケードの庭をご覧になるのです。マンション全体に”つながり”がある、それが敷地全体を通して統一感や結束という、マンションならではの価値を感じさせるのです。
【管理】
そしてもっとも大切なのが”管理”です。お庭や植物は完成したときがスタートです。住宅と違ってお庭は育ちます、出来たときのその価値を継続的に保って育てていくために、私たちは手掛けたお庭の管理も行っています。毎回同じスタッフが管理を担当することで、植物の成長や小さな変化も見逃さず管理することが出来ます。それがこのマンションの本当の価値に繋がっていきます。