池坊において”杜若(カキツバタ)”は
色んな季節でいけられる、人気の花材です
その季節に準じて”自然の姿”を写し取ります
葉や花の高さや関係性、位置、葉っぱの色、数、など
色んな変化を表現することが大切にされています
自然の中で、春と秋ではその姿は違いますね?
春では芽生えの季節で、花はつぼみでこれから成長しようとし
初夏では太陽に向かってスラっと育っていく

そして秋には葉っぱは枯れ始め
元気を失ったように湾曲しています
そういった”季節の移ろい”を表現できる
それが”杜若”の魅力です!
もくじ
カキツバタの生け方
■杜若の葉っぱ

カキツバタの葉っぱは
成長する順番が決まっているのです
自然の摂理なので、覚えておく必要があります
上の写真のカキツバタの葉っぱは
三枚で一株になっています
池坊の生け花において
カキツバタの葉っぱを見る方法、注意点は2つ!
・1番目の特徴

この葉っぱですが、真ん中の一番長い葉っぱが一番初めに成長してきます
そして右側の葉っぱ
最後に左の一番低い葉っぱが、最後に成長してきました
葉っぱの先端
何か特徴に気づきますか?

”かぎ状”になっているのが分かりますね!
”く”の字になっています

一番初めに成長してきた真ん中の葉っぱ
赤丸ですが、先端は右側に向いています
その右側から2番目の葉っぱが成長してきます
2番目の葉っぱは黄色丸ですが、先端は左側向きです
今度は一番左から3番目の葉っぱが成長してきます
3番目の葉っぱは青丸ですが、先端は右向きです
カキツバタの葉っぱは、先端が向いている方向から
次の葉っぱが成長してくるのです
交互になっている感じですね!
この特徴を覚えておきましょう!
この”自然の摂理”を理想のバランスで再現するのが
池坊のいけばなの特徴なのです!
・2番目の特徴

株状になっている杜若の葉っぱです

一枚一枚、バラバラにしたところです
次の特徴は葉っぱの表裏を見つけるコトです!
まず葉っぱを拡大してみます

葉っぱに影があるのが分かります
つまり、葉っぱは真っ平ではなく
外側が反っているというコトです!
葉っぱがお皿状に、船の底みたいに沿っているのです
反っている内側(見えている面)が”表”!
反対に見えてない面が”裏”なのです
試しに葉っぱを裏返してみましょう!

今度は葉っぱの端っこはピッタリ!
地面にくっついていますね
この場合は”葉っぱの裏側”が見えている状態です
お皿を反対に伏せている感じですね!
カキツバタの葉っぱは裏表があるのです
この特徴はしっかり覚えておきましょう!
”先端の向き”と”葉っぱの裏表”はカキツバタの特徴なのです!
■池坊の生け花の準備

現代の池坊では花をいけるとき
”剣山(けんざん)”を使います
この剣山はあくまで簡易的な存在なのです
かつて池坊では正式には”くばり”という
いけた花や植物を固定するモノを使っているのです
アルファベットの”Y”の字になった枝を使うのです
また写真のは”水盤(すいばん)”という器を使っています
これも簡易的な存在でして
正式に言えば、花器は高さがある器を使うのです!
そして花材は右側に置くことが決まっています
左に置いていると、隣りの方に使われると聞きました
では実際に生けていきます
”初夏のカキツバタ”です!
■実践!

基本的に言えば、”生花(しょうか)”です
まずは”真”を生けます
高さは50cm~55cmぐらい
カキツバタの花ですが、向きに注意が必要です!
私が生けているのですが
もうすでに花の向きが間違っているのです!
しかし、この時は分からず、そのまま進んでいきます

”真”の葉を生けます
向きは副えに葉っぱの表が向いている状態です
基本的な生花の生け方と同じ向きです
方が短く、陰方が長い
葉っぱが重なる部分ですが
短い葉っぱが後ろ、長い葉っぱが手前になるよう重ねます

そして”真後ろ”の葉っぱをいれます
初夏の場合は”一枚”
剣山から10センチほどのところから陰方に出ていきます
通常の生花と同じ感じに生けます
カキツバタは通常、二枚の葉っぱで一組ですが
真後ろは一枚だけです、あとでもう一枚”副えあしらい”としていれます!

”副え”は二枚組、陽方が長くて、陰方が短い
真後ろより短く、(まだ入れていない)真前と同じぐらいの長さ
この場合も短い葉っぱは、長い葉っぱの後ろ側に重ねる
葉っぱをそっと向かせたい方向へ撫でます
その通りにしなってくれます
あまり触りすぎると、グネグネになってしまうのでご注意!
ポイントとして、副えの先がスッと上に、真の方向になびくと
初夏の装いっぽい感じになります

”真前”の葉っぱを入れます、二枚組です
陽方が短く、陰方が長い
長い方の葉っぱは副えと同等か、少し長いぐらいが良い
真とくっつき過ぎないように
間をかえてキッチリ独立させることが大切です!
真後ろの方向へ向くのですが、あまり斜めにし過ぎないように!

最後に”体”をいれます
葉っぱは三枚組、一番長いのは”体真”一番右の葉っぱです
次に長いのは陽方の葉っぱ、真ん中は一番短い
花は体の葉っぱの後ろにいれます
真ん中の葉っぱと同じ位置からみえる感じです
花の全体が見える方が”初夏っぽい”
体の全体がしっかり陰方にあるコト!
前後でしっかり独立しているコト!
葉っぱ同士に隙間が無いコト!
それだけ気を付けていれたのに
花の向きが違うとな…
他をしっかり生けたとしても、残念です
■先生のお直し

お気づきでしょうか
当然のごとく、一番最初に”花の向き”を直されました
コンコンと説明してくださったので、少し詳しくご説明します

これが”杜若”の花です
開花するとぷっくらとしてとても魅力的な花です
つぼみはスリムで大きい!
この花ですが
池坊では正面と言われる向きがあります!
それは花びらが出来る順番に準じています

番号がふってありますが
この順番に花びらが出来るのです
そして池坊では、➀の花びらが正面なのです
初夏のカキツバタでは、正面を自分の方へ向かせます
ですので、はじめにしっかりカキツバタの正面を確認しましょう!

一番はじめに出来る花びらが正面
その正面を自分の方へ向かせるので
写真のようになります、そのまま生けます!
そもそもこれは”カキツバタの一番花”の話し
カキツバタは年に2回咲かせることが出来るのです
初夏に開花する花が”一番花”
そしてその後、秋前に咲く花が”2番花”
この2番花になると、花びらの順番が違うのでご注意!
■初夏のカキツバタ

横田が自分でいけた”初夏のカキツバタ”
真の葉っぱが花にかかってるとか
花の向きやら、バランスを注意されました
真前の高さがいつも崩れるのですよ

池坊目黒教室の澤井先生の初夏のカキツバタ
いつも思うのですが、全体のバランスが最高に良いのです
さすがですね!
副えのなびき具合とか、全体がふっくらとした感じですよね
カキツバタは”女性的”と言われます
スリム過ぎる花は直されます
しっかりと間をとって、ふっくらと生けることが大切です!

もう別モノといった姿ですね
私のはかなりスリム、男性的ともいえます
葉っぱ同士が近すぎて、体も陽方に傾いています
副えの反り具合が全く違いますね!

主に注意ポイントをご説明!
はじめにピンクの矢印ですが、ズバリ”花の向き”です
こればかりは誤魔化し出来ませんので、ご確認を!
次に赤の矢印
副えの葉っぱが全く違います!
真から離れるように沿っておき、最後にくッと戻る
オレンジの矢印は”体”です
位置関係ですね、体の全体が陰方にくるように!
花がしっかり全体が見える方が初夏っぽいです
黄色の矢印は”真前”と”副え”の位置関係
真前は真にかかり過ぎず、副えも真から離れていく感じ
先生の方が膨らみがある
それはそれぞれの葉っぱが重なっていないことの証明!
これらの注意点は”初夏のカキツバタ”の場合です
植物はその季節で状態が違うのです
まとめ
カキツバタはその時々の自然の姿を再現するのです
ですので、飽きることなく、ずっと稽古し続ける必要がある花材なのです
それと同時に、飽きることなく探求できる人気の花材です
カキツバタをマスターすることは季節の花を理解することです
まだまだ精進する必要がありそうです

池坊の良さは、季節の植物を使う
というコトだけではありません!
その季節の植物を理想的なカタチで表現するのです
理想とは、歴史に淘汰された日本人の”美”の基準なのです
現代の日本は、ほとんどが洋風
住宅に関しては、洋風であって日本独特の建築なのです
和のカタチをもった洋風の住宅が多いこと
お庭も海外の影響を受けつつ
でも日本的な洋風っぽい感じがほとんどなのです
それも日本独自の流れと言えるでしょう!
つまり、日本である以上”日本の美”は
今の時代でもしっかり私たちの心に焼き付いてるのです
DNAレベルで”美しい”と感じる感覚は”和”なのです
オススメ記事